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同族会社と生命保険の関係について

今回は、同族会社と生命保険の関係について考えてみたいと思います。

生命保険とは、本来人の死に関して、残された遺族などの生活を保障する仕組みです。ここでは、実際の生命保険の果たす機能について考えてみましょう。個人事業を行う事業者が、生命保険に加入した場合、病気になったら給付金がもらえ、死亡時に保険金が出るという本来の機能の他、税制面では所得税の生命保険料控除等を受けることができます。それに対し、法人がその社長を被保険者として生命保険に加入した場合、保障内容や生命保険の形態により違いはありますが、一部保険料を法人で費用計上できて、死亡時や満期時に給付金が出るというのが基本的な仕組みです。今回は、特に後者の場合、法人、特に同族会社の場合について、その果たす機能について検討してみたいと思います。

同族会社について、生命保険の果たす役割

同族会社に関して生命保険の果たす役割は、ずばり、①利益の繰り延べ、②退職金の支払原資(自社株式の評価の引き下げ効果を含む)、③相続税の納税資金対策の3つになるのではないかと思います。(給付金の給付などの本来的な目的も当然ありますが。)

①利益の繰り延べ効果

当期に生じている利益の一部を将来に繰り延べることにより、業績低下時の利益の調整弁とするというものです。この場合には、利益を繰り延べるだけなので、本質的なうまみはほとんどありません。あくまで時期がズレルということだけです。繰り延べるためにコストを負担していることを認識する必要があると思います。時期をずらすために、多くの費用を支払っていることを認識する必要があると思います。また、繰り延べ額が大きすぎると、資金繰りに悪影響が及ぶケースもあるので注意が必要です。

②退職金の支払原資

一部①の役割もありますが、退職金支払時の費用負担の平準化としての役割です。一部保険料を通常事業年度に負担して費用計上し、退職金支払い時の一時的な費用負担を平準化する機能です。また、生命保険金が給付されることにより、退職金支払いの原資となる積立金としての役割もあります。さらに、その退職金を払うことにより、大きな費用が計上できて、自社株式の評価が下がるという機能もあります(ただし、過大な退職金支払いは否認されるリスクもあります)。

③相続税の納税資金対策

同族会社本体とは、直接関係しないのですが、保険金受取人を死亡者以外の者(例えば、事業承継者)などにすることにより、相続人の相続税の納税資金にあてるというものです。(生命保険金は、特別受益に基本的には該当しないとされ、受取人固有の財産とされることによります。)なお、保険金受取人を法人とすることにより、相続人からの自社株の買い取り資金にあてるという方法もあります。

個人的な意見

筆者としては、①の機能はあまり積極的にはお勧めしません。本質的なうまみがないためで、その効果の割にはコストが大きいためです。利益が通常事業年度よりも過大に出ている場合に利用するとよいのではと考えられます。②と③の機能については、個々におかれている状況を正確に把握したうえで活用するとよいと思います。大きな確度で、キャッシュフローを将来に移転するような商品は基本的に生命保険しかないためです。とはいえ、全体の相続対策や事業承継対策の枠組みの中で生命保険を検討することが重要であると思います。文中は個人的見解です。